6月のCD/DVD2009年06月28日 22時57分24秒

《マタイ》の準備が進行しているさ中に、今月のCD選がめぐってきました。今月1位にしたのは、「シモン・ゴールドベルクの芸術」と題する、往年の名ヴァイオリニストの録音集成です(EMI)。戦前ベルリン・フィルのコンマスを務めていた世代の方なので1930年代から50年代にかけての録音が中心ですが、のちに日本に来られ、結婚もなさったということで、1991年に日本で録音というのも含まれています。

バッハとモーツァルトの協奏曲から聴き始めましたが、芸術への敬意と愛に満たされた高雅な演奏に引き込まれてしまいました。小作りで粋があるという特徴は、ベルカント・テノールなど当時の名人に共通する傾向です。それだけ戦後の演奏は、大柄に、外向きになったということですね。

2位はドゥダメル指揮、シモン・ボリバル・ユース・オケのザルツブルク・ライヴです(DVD、グラモフォン)。ベートーヴェンの三重協奏曲にアルゲリッチが出ているので、「アルゲリッチ&フレンズ」を外す代わりに入れようと思ったのが最初ですが、《展覧会の絵》やアンコールのヒナステラも圧倒的で、こちらだけでも充分。しなやかで熱っぽい、集中力抜群の演奏には、ベネズエラの若者たちの底知れぬエネルギーが渦巻いています。

3位には、有田正広指揮、東京バッハ・モーツァルト・オーケストラのライヴ(デノン)を入れました。モーツァルトのハ長調協奏曲におけるピート・クイケンの独奏が繊細で美しく、《ジュピター》の有機的な響きも、ピリオド楽器ならではです。