模範としたいホール・オペラ公演 ― 2009年06月29日 21時47分40秒
めずらしく日曜日(28日)に開かれた「たのくら」のテーマは、《平均律》。最近出た、4人のピアニストが分担して演奏しているDVD(ユーロアーツ)を、一部使いました。第1巻がアンドレイ・ガヴリーロフ(印象としてはリヒテルの系統)とジョアンナ・マグレガー、第2巻がニコライ・デミジェンコ(ギレリスの系統)とアンジェラ・ヒューイットによって演奏されています。見たかぎりではマグレガーがすばらしく、ロ短調が感動的な名演奏だと思いました。
大急ぎで飛び出し、静岡AOIへ。間宮芳生作曲のオペラ《ポポイ》(倉橋由美子原作)初演に列席するためでした。さすがに見事に仕上げられた作品で種々話題になると思いますので、ここでは一点だけ。
主演の吉川真澄さん(ソプラノ)が、首を飼育する好奇心に満ちた少女の心を明晰に、魅力的に歌ってくれました。私が特筆したいのは、この歌が明快ながら音量を控えて歌われ、聴き手を言葉に引き込む形で進められていたことです。中小のコンサートホールで上演されるオペラにおいては質の高い音楽内容こそが追求されるべきで、フルヴォイスの競演は必要ないと私は確信しているのですが、どうしたものか声量を競う公演になることが多く、もっと繊細な様式を普及させたいなあと思っていました。
その意味で模範的な公演を観ることができて、喜んでいます。こうした方向性が確立されれば、力を存分に発揮できる歌い手の方が、たくさんいるはずなのです。
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