農民の《田園》2013年01月28日 12時17分24秒

「北海道農民管弦楽団」というアマチュア・オーケストラをご存じですか?宮沢賢治の『農民芸術概論綱要』の理想を実現せんと北海道の農業関係者によって組織され、「鋤で大地を耕し、音楽で心を耕す」をモットーに、農閑期に集まって活動しているオーケストラです。勝負曲は、もちろん《田園》交響曲です。

と紹介しておりますが、不肖私、まったく存じませんでした(汗)。認知のきっかけは、「ウィーン・フィル&サントリー音楽復興祈念賞」への応募です。無事採択となり、1月27日(日)にそのコンサートが、賢治ゆかりの都市、花巻の市文化会館で行われました。じつのところ半信半疑で視察に出かけたのですが、早朝発の旅行記については、また別の機会に。

後発の東北農民管弦楽団、金星少年少女オーケストラ(←賢治つながり)も一部参加したコンサートは、賢治にちなむ新作《星めぐりの歌による幻想曲》(当日の指揮者、牧野時夫氏作曲)を交えた、多彩なプログラム。しかし看板に偽りなしで、大地に根を生やしたゆるぎないもの、音楽と正面から向かい合う気骨が、演奏にあるのです。

最後に演奏された《田園》には、その意味で本当に驚かされ、感嘆しました。とくに第2楽章の〈小川のほとりの情景〉。木管楽器のハイレベルなアンサンブルに聴き惚れていると、そこにいつしかオーケストラ全体の響きが集まり、自然と人間のよき交流の姿が、文字通り自然に、農業にかかわる方々ならではの裏付けをもって描かれていきました。ここに至るまでの活動の困難さは想像に余りありますので、それだけ驚きも大きかった、ということです。

祈念賞がこうした活動を少しでも知らしめる役割を果たすとしたら、本当に嬉しいことです。

コメント

_ 新潟T.H ― 2013年02月03日 10時16分24秒

今朝2月3日朝食の準備をしながら、ふとテレビに振り返りました。農民コンサートの指揮者の画面が出ておりました。先生の記事にあったと思ってテレビの正面に向かいました。聴いたというより見ていたのですが。この全曲放送(放映)があるとなおいいなあと思いました。

_ 東京ルビー ― 2013年02月03日 23時26分01秒

偶然に私も朝、小さな音のテレビからよく知っている感じのメロディーが流れてきて、それが何とも印象的に響くので無意識に画面を見ると・・・正に話題の農民管弦楽団のニュース! 慌ててボリュームを上げました。
コンサートマスターらしき実直そうなヴァイオリンのオジサマが先導して、確かな音程と意気揚々たる推進力で驚きの説得力。堅実な努力のアンサンブルが、誰も真似のできないような心のエネルギーでユニークに輝いている感じでした。もっとちゃんと番組を聴こうと思いきや、一瞬にして消えてしまったので、演奏会を含めたドキュメンタリー番組が実現したら面白そうだなと思います。

農業がお仕事の人たちの楽団が『田園』交響曲でアピール…何だかそれこそ宮沢賢治の物語世界をイメージできそう。。。日本人て精神性が高くて繊細な心情の、優れた民族なんだなとふと気づかされます。
のどかな田園風景の香りまでが漂ってくるようなA.クリュイタンスの古い名演がずっと心の中で基準になっているのですが・・・すばらしい心意気の高さは通ずるところがあるかも。。。

今日は節分…新年明けてひと月が過ぎ、でも心を入れ替えて仕切り直しのチャンス!

福は内ルビー

_ I招聘教授 ― 2013年02月05日 01時02分17秒

広く知られる機会があったわけですね。それは良かった。花巻に同行した方が、「演奏者のそれぞれに自分の田園がある」という感想を述べておられました。大きなことだと思います。

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