髪型2012年10月21日 13時20分48秒

NHKの「古楽の楽しみ」には、アシスタントが2人ついています。たいへん綿密な作業をしてくださり、うっかり間違いを救われたことが、何度もあります。先週録音に行ったところ、担当者の印象がとても変わっていました。そこで「あれ、髪型を変えられたんですか」とつい言ってしまい、しまったと思いました。

それには、古い記憶があります。大学に勤めたばかりの頃のことですからもう時効としていただきたいのですが、研究室の助手ががらっと髪型を変えてきたときに、「前の方が良かった」と言ってしまったことがあるのです。助手の笑顔が一瞬硬直したかどうかは気づきませんでしたが、多くの人から「それはまずいよ」と言われ、私もずっと気にしたまま、日を送ってきました。

時は過ぎ、世間でも、その手のことで女性が不快に思う話がしばしば語られるようになりました。ですから私も、気がついても気づかぬふりをする、たとえ驚いてもぐっと呑み込む、という人生を続けてきたのです。そうしておられる男性、多いのではありませんか?

こうした反応を身につけて死んでいくつもりでしたが、今回は、うっかり口をついて出てしまいました。ちなみにアシスタントの返答は、私の想定外のものでした。「気がついていただいてありがとうございます」--と彼女は言ったのですが、これって、ひとつの定番なのでしょうか。

回転お手2012年10月12日 10時19分31秒

犬は、利き足というのがあるでしょうか。皆様の愛犬は、お手を右足でしますか、左足でしますか。ほとんどの方がまず右手をお出しになるでしょうから、犬も右足で応じる、というイメージが浮かんできます。

わが家の陸(オス、4歳)の場合、右足で握手(?)する前にちょっと左足を挙げることに気づきました。人間の手の出し方でどちらでも対応することがわかったので、少し練習し、「回転お手」という芸を完成させました。右、左、右、左と(逆順も可)高速でいつまでもお手を続けます。これって一芸のような気がしますが、やる犬、たくさんいますかね。妻には「かわいそう」と言われましたが(笑)。

整形外科へ2012年09月18日 16時43分10秒

「ステージからの転落」全3話はたくさんのアクセスをいただいたのですが、結末が結末なので、満足された方は少なかったようです。「なあんだと思った」と正直におっしゃる方、「つい期待してしまいまして」と恐縮される方、「コインロッカーの時も結局開いちゃったんですよね」と先例を指摘される方。私は、ああ皆さんに支えていただいているんだなあとあらためて思いつつ、事態に責任を感じていました。

痛みは日に日に薄らぎ、それほど不自由なしに歩けるようになってきました。ところがここ2~3日、思い出したように患部が腫れて、痛みが出てきたのです。そういえば、後から痛みが出ることがあるから気をつけるように、と、何人かの方から言われていました。

骨折が疑われましたので、ついに整形外科へ。道中、ブログのレイアウトが頭に浮かびます。タイトルは直截に「骨折しました!」とすべきだろうか。それとも「転落後日談」というふうにぼかすべきだろうか。いずれにしてもネタが取れ、満足率も上がるのであれば、よしとしなくてはなりません。

レントゲンを撮りましたが、骨折はしておらず、患部をひねったことによる痛みだろう、ということになりました。患部に水かお湯を吹き付ける治療法がよく、あとは安静と湿布だそうです。オチはつきませんが、多少とも前進、とお考えください(汗)。

3つの目標2012年09月07日 14時31分27秒

この4月からというもの、どうにもペースをつかめずに過ごしてきました。相対的に緊張感が低下したため、能率が上がらないのです。従来よりひとつひとつの仕事を丁寧にケアできるようになり、もろもろの準備も早手回しになっていてそれはいいのですが、そのように過ごすだけでは、まとまった結果を残すには至りません。

少し緩めると、月日はどんどん過ぎてしまう。昨年より今年の体力は低下しているとしても、だからといって生産力を落としているのでは、ジリ貧です。ゆっくり過ごした1日とがんばった1日では、充実感をもって終われるのは、断然後者。やはり何かに打ち込んで達成感を得ることが自分には必要なのだと認識しました。

「今何をなさっているんですか」と問われて、答えられなかった、この半年。目標を自分自身で作り出す必要があります。そこで考え、3つの目標を設定して、勉強していくことにしました。長期的なものが1つと、中期的なものが1つ、比較的短期のものが1つ。毎日少しずつ進めていこうかと思います。3つとも、うまくいけば世の中への恩返しになるテーマですが、本当に進められるかどうかは、やってみないとわかりません。軌道に乗った段階で、いずれご案内しようと思います。

早手回し2012年08月22日 23時28分13秒

暇になったはずなのにいっこうに時間を上手に使えず、皆様にお伝えするような本格的な仕事ができていない、私。ひとつ言えることは、めぐってくる仕事の準備やケアを以前よりしっかりやっていること、そしてそれ以上に、仕事を早手回しに済ませるようになっていることです。

長いこと私は、ギリギリ派で通してきました。締め切りの仕事があると、催促をもらったタイミングで拍車をかける。必然的に絶えず追われている形になりますが、その分緊張感が高まり、短い時間に多くのことができるばかりか、出来栄えもよくなるように思ってきました。つねに早めに仕事をする人を偉いと思う反面、追い込まれて必死の作業をする人に比べ、見切りが早い傾向があるように思ったことも何度かあります。

ところが、私、早くなってきたのですね(笑)。今日はなんと、9月一杯と約束していた仕事を仕上げました。それは、いずみホールの「ウィーン音楽祭」で使う字幕の仕事です。ミサ曲の字幕は作っていましたが、レクイエム(モーツァルト)のテキストにはまともに向き合ったことがなかったので、とても勉強になりました。こうした傾向が老いの兆候にすぎないのか、自分なりの成長と考えてもいいのか、よくわかりません。能率自体が上がっているとは、思えないものですから。

眠れます!2012年08月15日 09時23分46秒

通販にお金をかけている人って、たくさんいるんでしょうね。BSなどほとんど通販の番組で費やされていますから、よほど売り上げがあるのだと思います。

私は半信半疑で見るだけでしたが、家族は熱心。このたび、Dormeoという、高反発マットレスが、当家にやってきました。なんの予備知識もないまま寝てみましたが、これが、じつによく眠れるのです。寝付きよくぐっすり眠れ、変な夢を見ないばかりか、起きて平常に戻るまでに、少しタイムラグがある。遠くから、はるばると戻ってきた感じなのです。

私はホテルのようにふかふかに沈むベッドが苦手なので、そういう相性もあるかもしれません。しかしこれほど劇的に効果があるのは驚きで、お薦めしたい気持ちになっています。子供たちも、まったく同じことを言っております。

御礼2012年08月04日 23時05分24秒

留守中にたくさんのコメントをいただきました。ありがとうございます。金曜日のオルガン・コンサートのことは詳しくご報告したいと思いますが、風邪の調子が悪く、明日までお待ちいただきます。今日は、ゆっくり休みたいと思います。

酷暑の会津若松2012年07月31日 23時34分04秒

会津若松には午後2時に到着しましたが、ホテルのチェックインは4時です。そこで、荷物をコインロッカーに預け、市内を散策することにしました。この令名高い都市を訪れるのは初めてです。

汗が吹き出すほとの暑さ。それでも歩き回ろうと思うのは、かつて夏山をやっていたからでしょう。しかし熱中症で死亡ということになってもみっともありませんから、水分の補給は心がけました。かつては下山のおりなど、ビールをおいしくしようと、水分を採らずに歩き続けたものなのですが。

風格のある大きな町。でも喜多方と違って、見所や飲食店が散らばっています。そこで、片道40分ほどかけて鶴ケ城を往復する間に、夕食のお店を偵察しました。これだと思ったメニューは、ソースカツ丼。会津は、独自のソースカツ丼の発祥地らしいのです。候補のお店を3つ、頭に入れました。

そもそもなぜ会津若松にいるか。地元の宝、白虎隊に取材したオペラ《白虎》が、地元の総力を挙げて、今日(27日)、初演されるのです。作曲家も台本作者も、また出演者のほとんども、私の親しい人たち。ソースカツ丼で腹ごしらえをして鑑賞しようと、早めにホテルを出ました。

ところが、当たりを付けていた3つの店が、全部閉まっている。結局食べられないまま、会場の「會津風雅堂」に着いてしまいました。喫茶コーナーに行き、クリームソーダを注文。暑さと空腹に迫られての、おそらく20年ぶりの注文です。

クリームソーダはおいしかったのですが、入れすぎてこぼれてしまったというので、ボランティアの方が平謝り。その様子がいかにも善意に溢れていて、心温まりました。こうした公演ならではの光景です。小さい女の子が務める案内役も、かわいかったですね。

宮崎から鈴鹿へ2012年07月25日 02時00分35秒

前話に写真を公開しましたのでご覧ください。コンサート終了後は、打ち上げ。印象的だったのは、大薗家の方々の名望とまとまり、支える周囲の方々の温かさでした。ご親族には、国音卒の声楽家もいらっしゃいます。お父様の音頭で市内まで繰り出すことになり、恩師の一人、篠井寧子先生とご一緒にお伴しました。4歳のお嬢さんも最後まで元気いっぱいでしたが、将来、どうなられますやら。

翌日(土曜)はそのツケが回り、疲労困憊。早朝の飛行機に乗っての宮崎→名古屋中部空港→名古屋→白子(鈴鹿)の移動はヘロヘロでした。会場となった鈴鹿国際大学に向かう間に気づいたのですが、鈴鹿市には「磯山」という地域があるのですね。磯山4丁目、磯山2丁目、という感じで。語源は何なのでしょうか。

準備もあわただしく、13:00から講演開始。しかし、研究者の私でも最近やっとわかるようになった《ロ短調ミサ曲》について、一般の短大生に話すことは適切でなかったと反省しています。ご承知の通り、背景からテキストから成立事情から、たいへん複雑な作品だからです。学生さんにはその意味で申し訳なかったですが、合唱団から聴きに来てくださった方が何人かあったのはありがたかったです。

終了後、学長の佐治晴夫先生、お世話いただいた十津守宏さんと、あなご料理で会食。佐治先生は高名な物理学者ですが、音楽にも専門的な素養をお持ちで、音楽、宇宙、時間、存在といった事柄について、突っ込んだ識見を披露してくださいます。理系の大先生は交友範囲にいませんので、一言も聞き漏らすまいと耳を澄ますのが、毎度のこと。3冊も本をいただいて来ましたので、そのうち読書コーナーで紹介しましす。疲れましたが、実りある2日間でした。

続・宮崎のキャサリン妃2012年07月23日 23時56分26秒

プログラムは《月光》ソナタ、バッハ=ブラームスの《シャコンヌ》、《展覧会の絵》というものでした。《シャコンヌ》は、最初のリサイタルで採り上げて以来、シムウェルさんのレパートリーになっています。今回、ブゾーニ編曲に挑戦しようかと思ったが、ブラームスの方がずっといいのでブラームスにした、とのお話。同感です。

《シャコンヌ》の原曲は、無伴奏ヴァイオリンです。すなわち、本来は不可能な手段で、オルガン顔負けのポリフォニーを構築しているのがこの曲。聴き手の想像力に訴える分だけ、深いわけです。これに対しブゾーニの編曲は、グランドピアノを駆使して、ヴァイオリンのできないところを全部顕在化しようとしている。華々しいが、奥行きがありません。一方ブラームスは、左手に限定しているためにヴァイオリンの譜面からあまり離れておらず、手段の制約、想像力に訴えるという本質的な部分を残しています。はるかに、バッハを聴いた気持ちがするわけです。

あまり聴く機会のないブラームス編曲ですが、よく弾き込まれていて、起伏と盛り上がりのある、見事な演奏でした。後半、《展覧会の絵》の演奏も、修士論文で取り組まれただけあって、曲想をよくとらえた、絢爛たるもの。ほっそりしたお姿からは考えられないほど思い切りがよく、めりはりが利いているのです。度胸、という言葉を使いたくなりましたが、どちらもリハーサルに比べて格段にテンポが速かったことからしますと、超ハイ・テンションであられたのかもしれません。

というわけですっかり感心し、どうしてこうしたことが可能であるのかを思い巡らせました。想像するに、次のようなことではないかなあ、と。女性は家庭を持つと時間も労力も大幅に割かれ、音楽に集中できない場合が現実には多いと思います。それは音楽にとってマイナスとしか普通には思われないのですが、その安定感がプラスとなって、音楽的に成長するということがあるのではないか。もちろんいつもそううまくはいかないでしょうが、家庭は単なるマイナスではない、という実例が、ここにあるのではないか。恩師の先生(女性)にそう申し上げたところ、自分もそう思う、とおっしゃいました。世の女性を勇気づけることではないか、と思った次第です。