「古楽の楽しみ」発進2013年01月10日 22時04分29秒

今日から、NHKの録音が始まりました。午後1時に、勢揃いしたスタッフと、新年のご挨拶。そしたら好人物のプロデューサーが、「聖心、たいへんだったそうですね」と、満面の笑顔でおっしゃるではありませんか。満面の笑顔にはちょっとひっかかりましたが、皆さんに楽しんでいただくのが自分の使命だという立場からすれば、いいことをしたなあ、と満足。これからも楽しんでいただきます(認知症を心配されるコメントもいただきました・・汗)。

前回はせっかく年末年始のいい時間枠をいただいたのに、ご案内を忘れてしまいました(認知症?)。そこでは、《マニフィカト》の歴史を、グレゴリオ聖歌からバッハ父子までたどりました。個人的にはバンキエーリの作品が、印象に残っています。

どちからというとバッハおよびバッハ以前を扱う機会が多いので、1月最終週の出番では、「モーツァルトからバッハへ」という、ポスト・バッハの世代の音楽家たちを特集しました。今日録音したのは、27日、28日の分です。

モーツァルトは、ウィーンに出てスヴィーテン邸に通うようになり、ヘンデルとバッハの音楽に親しみました。ここで「バッハ」というのは、ゼバスティアンだけではなく、フリーデマンとエマーヌエルを含んでいます。そこで27日(月)は上の息子二人を特集することにし、フリーデマン晩年のフーガ、初期のファンタジー、エマーヌエルの晩年のファンタジー、シンフォニア、中期のフーガで編成しました。二人の晩年は、モーツァルトがウィーンに出てくる頃にあたります。

エマーヌエルのロンド《ジルバーマン・クラヴィーアとの別れ》という作品を取り上げましたが、これは渡邊順生さんがクラヴィコード音楽の最高傑作と絶賛される作品です。名著『チェンバロとフォルテピアノ』(東京書籍)に、詳しい情報があります。

28日は、バッハの下の息子たちの特集。ヨハン・クリスティアンと、ヨハン・クリストフ・フリードリヒです。この2人のCDが、最近充実しているのです。

取り上げた作品は、クリスティアンが op.5-4のソナタ(←モーツァルトがコンチェルトに編曲したK.117-3)、管楽器のためのシンフォニア第3番(演奏はナハトムジーク)。クリストフが、ト長調のシンフォニア(フライブルク・バロック・オーケストラ演奏)と、名前によるフゲッタ。どれもいい曲で、感心しましたね。クリスティアンのシンフォニアの魅力はたいしたものだし、フリードリヒのシンフォニア(モーツァルト死後の作品)など、途中から聴いた方は、バッハの息子たちのうちでも影の薄い三男の作品とは、まず思わないのではないでしょうか。じつに堂々たる作品です。こうした作品が、いま研究の進展でよみがえり、録音されつつあるわけで、それをご紹介できるのが、放送の醍醐味です。

一番気に入っているのは木曜日の回。それは明日録音します。

コメント

_ マッキー ― 2013年01月17日 22時54分48秒

今回の企画、大作曲家の音楽的繋がりを、普段聞くことが少ない作曲家の作品を通じて知ることが出来るようで、クラヴィコード音楽の最高傑作とかもあり、興味津々です。特にバッハの息子とスヴィーテン男爵への感謝を忘れないように聴いて行きたいと思います。
ところで「27日、28日の分」とか、「27日(月)」や「28日」とあるのですが、27/28の月/火だと思っています。楽しみにしております。

_ I招聘教授 ― 2013年01月18日 00時06分08秒

あっ、28日(月)がフリーデマン/エマーヌエル、29日(火)がクリスティアン/フリードリヒです。ごめんなさい!!

_ マッキー ― 2013年01月29日 22時53分49秒

フリーデマンのフーガ第8番(弦楽合奏版)で、意味ありげな下降音形のメロディが何度も何度も(30回以上?)現れる、モーツァルトの作曲と伝えられていた、余りアダージョぽくないアダージョが面白くて耳に残りました。
何処かで聞いたようなこの下降メロディと思って確かめたら、似ています。ハ短調ミサのキリエに何度も聞こえていました。

よたよた感?もある音楽の流れが独特で、何だか不思議な世界に連れていかれるエマニュエルの鍵盤音楽を聞いていて、これは、流麗なモーツァルトの印象と全く結び付きません。でも、シンフォニアを聞いて、明日放送のイタリアの作曲家の音楽と融合されると、初期のモーツァルトの交響曲の調べが浮かび上がってくる気がして、明日が楽しみです。

それにしても、ロンド「ジルバーマン・クラヴィーアからの別れ」、本当に美しかったです。晩年になって深化洗練されたエマニュエルの、時に考え込むような音楽世界に魅せられました。

クリスチャンの楽曲、モーツァルトに大きな影響を与えたのだなぁーと聞いていて実感でき、何だか嬉しい気分になりました。

J.C.フリードリヒのシンフォニアは、大らかさがあって幸せな気分にしてくれたのですが、でも、正直言って、ありふれていてちょっと退屈でした。

「古楽の終り行く時期の姿」に明日も楽しみです。

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