コメント交流 ― 2009年05月13日 23時08分26秒
当ブログを訪れてくださる皆さんは、コメントまでお読みになられますか。いいコメントがたくさんありますので、ぜひ読んでいってください。まあ時節柄、趣意居人さん、常笑居人さんといった傾向の方もおられるわけですが・・・(汗)。
今日は2つ、うれしい書き込みがありましたので、こちらで対応させていただきます。私は近過去に「室内楽作品研究」、「弦楽器作品研究」という授業をやりましたが、科目が開講された最初の年のみ担当し、あとは別の方に譲っていました。しかし前者の授業に出て演奏もされた方が、今はハンブルクでキリスト教のことを考えつつフルートを学んでおられることを知り、また授業を担当したいなあなんて思っています。「オレンジ窓と青メガネ」というコンテンツの超豊富なブログとリンクしてくださるとのこと、よろしくお願いします。ぜひ、トラヴェルソが上手になってお帰りくださいね。
もうお一人、カンタータのファンであるBorsさん。「身体がふるえる」という感動の仕方や、その対象が「罪のしもべ」を歌う第55番であることなどに、私と近いメンタリティを感じます。
そのBorsさんから、私の好きなカンタータを2、3曲教えて欲しい、というリクエストをいただきました。好きな曲はたくさんありますが、この曲が究極の作品だ、と思うのは、教会カンタータでは第140番、世俗カンタータでは、選帝侯妃追悼の第198番です。第140番は、冒頭の付点リズムが静かに響き出すといつも、総毛立つような思いにとらわれます。今年はこの曲をくにたちiBACHコレギウムで採り上げるので、楽しみです。
あらかわバイロイト! ― 2009年05月14日 22時39分00秒
「あらかわバイロイト」。今年から始まるワーグナー音楽祭の名前です。「サンパール荒川」というホールは聞いたことがなく、じつのところ半信半疑で公開ゲネプロに出かけました(日暮里からタクシー)。公演は明日の金曜日から3日間ですが、時間がまったくとれなかったのです。
出し物は《パルジファル》。宗教的内容をもつ至難・至高の作品で、私のライフワークの1つに当たります。これがどんな風に再現されるのか。ロストック市立国民劇場との共同制作で、指揮も演出もそちらから入っていますが、私の感想は、おおフルオケだ、などという失礼なところから始まったのでした。
ところが、堂々の水準なのですね、これが。森の場面が聖堂内に変わり、不気味な礼拝場面が繰り広げられるあたりはすばらしい音楽が続きますが、田辺とおるさん(アムフォルタス)の圧巻の歌唱を得て、迫力充分でした。
こうしたイベントを地域に興すことがどのぐらい困難なことか、私にも想像がつきます。絶対に欠かせないのは、先頭に立つ人の志の高さと人間的な求心力です。その意味で、公演監督兼主役として全体を牽引しておられる田辺さんを、心から尊敬します。
明日までにCD/DVD選を仕上げなければならず焦っていましたので、重要な第2幕、感動的な第3幕は見ずに帰宅しました。ごめんなさい。
危機管理 ― 2009年05月17日 22時15分30秒
事が起こったときにどう処理するか。人生においてその能力がとりわけ大切である、という認識のもとに公開するお話です。
土曜日は大阪でオペラ公演に立ち会い、宿泊。日曜日は早稲田の講座を済ませて帰宅するという予定で、あらかじめ、早稲田の講座を準備しました。カンタータと聖書の関係が2回目のテーマなので、第140番を採り上げよう。DVD(コープマン)の鑑賞から初め、私の『カンタータの森』の当該項目をテキストとして勉強し、2時間を費やそう、というのが当初の計画でした。
ところが、DVDを大学に忘れてきたことが発覚。もう取りに行けませんので、大阪の出発を早くし、石丸電気に寄って購入しようという計画を立てました。石丸の3号店でまとめ買いをした木曜日に、そのDVDが棚に並んでいるのを見ていたからです。ところが(2度目)、石丸に行ってみると、棚にそのDVDがありません。本店にも在庫なし。さあ、困ってしまいました。
CDは持参していたので、CDで予定通りやるか。あるいは新たに購入した素材を使い、カンタータから離れた講義をするか。どちらも望ましくないですが、最終的にはリクエストで決めることにし、とにかく探索に最善を尽くすことにしました。しかし残り時間が少なく、選択肢は限られています。
ともあれまず早稲田のセンターに行き、地下鉄を使って、高田馬場のムトウを往復することにしました。拙著のコピーを、スタッフに依頼しなくてはならなかったからです。全身に焦りと緊張がみなぎっていたことは、言うまでもありません。
ところが(3度目)、血走った目でセンターを出ると、安い食堂を探してふらふらと歩いている、なじみの顔があるではありませんか。齋藤正穂君です。私が喜んだのは、よく来てくれた、というのもありますが、それ以上に、しめた、これで2方向の店を探せる、と思ったからでした。
しかし、期待のムトウにもモノは見あたりません。そこでまさお君に新宿をあたってもらうことにし、私は大急ぎで早稲田に戻って、講義に入りました。つなぐことしばらく、新宿で発見、のメールが入り、さらにしばらくして、DVDはめでたく到着。講義の役に立てることができました。以前ならCDで何でもないのに、いかに視覚に頼るようになっているかに、われながら驚きます。
DVDを忘れたのは私の不注意で、ツキではありません。安い食堂を探していたまさお君と鉢合わせをしたこと、新宿の店にモノがあったことは、大きな幸運です。さらにツイていたのは、受講生の中に、私が購入したDVDと持参した拙著を引き取って下さる方があらわれたことでした。どうやら今日も、ツキを使いすぎる1日になったようです。
応援したいレストラン ― 2009年05月18日 23時03分12秒
おいしいものを食べるのって、いいですね。私の勤め先は西武拝島線とモノレールがクロスする玉川上水駅のもよりですが、大きな団地を擁している割には、レストランの選択肢がありません。そこで、金曜日の夜、勉強で遅くなったついでに、お店を開発してみよう、ということになりました。
すると駅のロータリーに、フレンチとイタリアンのお店が並んでいます。メンバー3人で予算も少なかったので、イタリアンの方がカジュアル、という仮説のもとに、「KISAKI」というそのお店に入ってみました。見慣れないのも当然で、この2月に開店したのだそうです。
木のテーブルがしっとりとして美しく、落ち着いた大人の雰囲気。メニューを見てわかりましたが、これ、かなりの高級店なんですね(汗)。覚悟を決めて食べましたが、アンティパストの生ハムやサラダからメインのラムにいたるまですばらしいおいしさで、「当日のワイン」がまた、選び抜かれている。しっかり、お好みの中に加えました。
金曜日の夜ですが、その日だけのことなのかどうか、お客様があまりいません。ようし、応援するぞっ、と張り切る私を、同行者たちは「それではお店が・・」といさめた次第です。
いったい誰? ― 2009年05月19日 21時40分05秒
イタリアンの話題を公開することには、若干の躊躇がありました。なぜなら、その美味を私とともに味わった受益者が2人いるわけで、その人たちが「いったい誰?」という詮索の対象になってしまう流れが考えられたからです。私の周囲にはお腹を空かせた若い人たちがたくさんいますから、思わぬもめごとが起こらないともかぎりません。まあでも、詮索も面白いですね。30代と20代の男女ひとりずつ、というぐらいのヒントにとどめ、あとはご想像におまかせします。
こんな話をするのも、「いったい誰?」という思いを、私自身が抱いているからです。最近よく書き込んでくださる「首位巨人」さん。自他共に許す控え目なお人柄と洗練された対話術をお持ちの方です。じつは、その知性からして同業者ではないかと思え、近くのある人を疑いました。でもそうではないようです。離れたところにおられる方ですね、きっと。
今までは、この手の仕掛けはアンチ巨人が巨人ファンに対してするものと、相場が決まっていました。しかし今は、巨人ファンがアンチ巨人に仕掛ける時代になったようです。う~む。それにしても、今日ご訪問がないのは、なぜなのでしょうか。心からお待ちしているのですが・・・。
隅田川 ― 2009年05月21日 22時46分51秒
5月16日(土)にいずみホールで、能《隅田川》とブリテンのオペラ《カーリュウ・リヴァー》の公演がありました。ご尽力いただいた方々に感謝しつつ、作品への感想を述べたいと思います。
イギリスの作曲家、ブリテンが能楽に並々ならぬ関心をもっていたこと、日本滞在の折に《隅田川》を見て感動し、その詳細な研究に基づいて、舞台をキリスト教的中世に置き換えたオペラを書いたこと、このため能とオペラを抱き合わせた公演が広く行われていることは、ご承知のとおりです。でも両者を見て感じるのは、能という伝統芸能の圧倒的なすばらしさ。ブリテンの作品もこれにはとうてい敵し得ない、と断言してもいいように思われます。
亡き子を思う母の思いが高まり昂じて、ついに霊界との交流が実現する。そのプロセスも迫力満点ですが、朝になるとすべては消え去り、草茫々の墓があるばかりだった、という無常観への収斂が、本当に味わい深いと思います。ブリテンでは、祈りを通じて神の奇跡が実現し、母が狂気から癒される、という結末になっているのです。ブリテンには《放蕩息子》という宗教的オペラもありますが、これも私には、深い内容のものとは思われません。
《隅田川》のクライマックスで、少年の霊が降臨する場面。私の心には、少年を出さない方がいいのではないか、という思いがよぎりました。いま笠井賢一さんの書かれた解説を読み直していたら、じつは世阿弥がそういう意見で、作者の元雅と論争したのだそうですね。昔から好きな能が、いっそう身近に感じられるようになりました。
涙もろい ― 2009年05月22日 21時42分29秒
私は、悲しくて泣く、ということは、絶対にない人間です。そんなこと、思いもよらない。しかし「なんてすばらしい音楽だろう」と思ったときに涙が出てくる傾向はずっと加速していて、これはたいへん困ります。なぜなら、学生さんや受講生の方々により抜きのすばらしい演奏を紹介する機会が多くあるからです。
今日もある授業で、エトヴィン・フィッシャーを紹介するためにシュワルツコップの歌うシューベルトの《水の上で歌う》をかけたところ、久々に聴くその音色の、記憶をはるかに超える気高さに圧倒的な感動を覚え、抑制のきかない状態になってしまいました。みっともないことです。でも、こうしたことが自分の人生を支えているのかな、とも思います。
エンドレス・ループ ― 2009年05月23日 23時15分34秒
日常生活に、繰り返しはつきものですが・・。
今日は第4土曜、朝日カルチャー横浜校のバロック・シリーズの日です。折良く《マタイ受難曲》の番になりましたので、前もって資料も送付し、進行も決めておきました。楽勝、という雰囲気でした。
ところが、今日使うはずの素材をほとんど、6月の公演に出演される学生さんに貸していることに気がついたのです。さあ、弱った。横浜のHMVに駆け込む自分が想像されます。でもなかったらどうしよう。早く出るのもたいへんだし、お金だって、かけたくはありません。はい、日曜日とまったく同じパターンです。
救いは、学生さんが横浜の在住であること。メールを出してみるとすぐつかまり、今日ちょうど出かけるので預けておく、とのことでした。南武線で移動中に、カルチャーの担当者からも、「ご安心下さい」とのメール。おかげさまで気持ちが乗り、会心の出来映えになりましたので、回転でないお寿司屋で遅い昼食をして、帰ってきました。
幸運が重なり、ツキをまた、だいぶ使いました。どうも5月自体がツイているようなので、6月が心配です。
またご案内しますが、6月5日(金)の夜芸大で、リフキンの講演会があります。《ロ短調ミサ曲》に関する原稿を私が訳しますが、じつにすばらしい内容です。この作品に専門的な興味のおありの方は、時間を空けておいてください。
相撲雑感 ― 2009年05月25日 23時03分44秒
相撲の人気は、やはり根強いですね。私も子供の頃ほどではありませんが、一定の関心をもって見守っています。
今場所印象的だったのは、日馬富士(えっ変換できました)対朝青龍戦。朝青龍が上手を取らせなかったのに組み手は五分五分で、上手を取ったところで外掛け成功。明らかに日馬富士の方が強い、という印象でした。白鵬に対しては、うまく先手を取れれば勝つ可能性がある、というぐらいの力関係かなと思われます。
モンゴル力士が席巻していてもあまり違和感がないのは、彼らの日本語のすばらしさによるに違いありません。このように教育すればこれだけ覚え、社会にも溶け込める、ということですよね。野球とは大違いです。たいしたものです。
ところで、日馬富士が稀勢の里戦で変化して勝ったことについて、批判が集中しているそうですね。でも、いかに上位とはいえ、軽量力士が変化することがそんなに悪いことでしょうか。クイズでひっかけ問題ばかり考えている私としては、インサイドワークも勝負のうちだと思うのですが・・・。
カウントダウン18--セミナー第2回 ― 2009年05月27日 23時30分38秒
今日から、《マタイ受難曲》初日に向かってのカウントダウンを始めます。話題はいろいろになるでしょうが・・。
今日は、初演の場である「杜のホールはしもと」の視聴覚室で、2回用意されたセミナーの第2回がありました。日本側の演奏者たちがリーダーの大塚直哉さん以下出演しましたので、早々とキャンセル待ちとなる盛況でした。
流れは、次のようなものでした。まず演奏のコンセプトについて、私があらためて解説。次いで、4人の歌い手(小島芙美子、坂上賀奈子、中嶋克彦、小藤洋平)によって、〈受難コラール〉の4度の出現を比較。コラールは、第1グループと第2グループが合体して歌う部分です。
休憩後は4人のアリア(すなわち第2グループ担当の曲)を聴き、そのあとは壇上に並んだ演奏者たちと一緒に、客席と質疑応答をしました。演奏者の方々に話が集中することを予期していたら、次々と出る質問は作品の核心に触れたものばかりで、私がほとんど応対。やはり、セミナーにいらっしゃる方は違いますね。それでいて、演奏を好意的に聴いてくださっているのが嬉しいところです。
今回の公演では、バッハのパート譜に従って、ユダ+祭司長1に1人、ペトロ+カイアファ+ピラト+祭司長2に1人、専用のバス歌手を立てます。担当してくれる千葉祐也君、狩野賢一君と今日初めて練習しましたが、闘志盛んで、なかなかの出来映え。セミナーにも華を添えてくれました(華じゃないと思うが、まあ華としておきましょう)。これおをよい機会として、盛り上がっていきたいと思います。ありがとうございました。
最近のコメント